東京駅と二人と一匹の夜

義母を東京駅に息子と送っていった。
せっかくなのでのぞみのグリーン車をとってやった。少しは快適だっただろうか。
息子は手を振り、大きな声で「ありがと〜バイバイ」と教えてもいないのに礼を言った。
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義母と私はいうならば戦友のようなものだ。
どちらも、病人を少しでもよい方向へいくように。
不憫な子供をなんとか少しでも楽しくさせるように。
それだけを考え、戦ってきた。

我々のことをとやかく言う人もいるようだが、少なくとも二人の間では限られた条件の中お互いベストを尽くしたと確認している。

義母の協力がなければここまでできなかっただろう。

新幹線の中、義母はなきながら手を振っていた。
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直接会った人やメールをもらう人からも「よくやっていましたね」「がんばりましたね」「なかなかできないことですよ」などと言われる。
もちろんそうでない感想を述べる人もいるようではあるが、そんなにたいしたことをしたのか不思議である。
だれだって、時間が限られた病人がいたら同じことをやるんじゃないのかなぁ。
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地元の駅から帰りながら青空を見上げ息子が言う。
『天気がいいからおかあさんが見えるかな』
『きっとみえるさ』
『おかあさんはおほしさまになったんだよね。きっとおつきさまだよ』
『晴れた夜に見てみようぜ』

息子よ、晴れた日に高いビルにでも登ってみよう。おかあさんが見えるかもしれないよ。
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息子が一人でお留守番ができるという。
15分ほどで帰ると家の鍵が開いていて、息子が家の中にいない。
心臓が止まる思いで家の外に飛び出すと、ちょっと先で近所のおばさんと一緒にいた。
車が帰ってくるのを待っていようと思ったらしい。

いつのまにやら玄関の上の鍵まで開けられるようになっていたのか。冷汗。
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外に食べに行った。息子が言う。
『あしたはどこにいこうか』
『外でばっかりは食べられないぞ』
『家でだれがつくるの?おとうさん?』
『そりゃそうだ』
『あしたは家でたべたいな』
息子のリクエストで焼肉屋へ。
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風呂あがりの支度をして二人で風呂に入る
二階でお話をしながら寝付いた。
若干の片付け、洗濯のタイマーセット、猫トイレの掃除、猫のブラッシングをしてパソコンに向かっている。
膝の上では猫が丸くなっている。落ち着いたらしい。
あしたは早起きで燃えないゴミをださなければ。なにせ一山できているので大変だ。