ひとつの結末

『お話があります。ちょっといいですか』
二人で給湯室に向かう
『どうした?』
『母が・・・・あと3ヶ月なんです』

そうかたるT君の目は真っ赤だった。

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妻の再発がわかったころだったか。
母上は卵巣がんの転移でいきなり宣告されたのだった。
そこから築地にいって戦いを始めた。

二人で昼休みにお互いの情報交換をした。
マーカー値がさがったといえばお互い喜び、あがったといえば二人でため息をついた。
病院の愚痴をいいあい、医師の悪口をいい、キノコの話やなんやらいろんな話をした。
病院の評価、治療法などなど。
病人のわがままの愚痴も話し、看病の家族の悩みを話した。

妻も彼の母上のマーカーが下がると自分も奮起し、上がると我が事のように感じていた。

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昨日母上は亡くなられたらしい。
3ヶ月といわれてからここまでがんばった。
激しい抗がん剤の副作用に耐え、ご主人は定年まであとほんの何ヶ月だったが退職されて支えておられた。
伝えたいことは伝えられただろうか。
してあげたいことはできたのだろうか。

合掌

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葬儀は親族だけで行うようだ。
その気持は痛いほどわかる。