パンケーキとガンダムと(4)

手術の日はあっけなくやってきた。
病院と実家の往復をしていたらポツンとやってきたかというべきか。

朝9時からの手術だったので8時半には来るように言われていた。
手術前の妻と少し会話をし、妻はストレッチャーにのり手術室へのエレベータに乗った。

手術室に入る妻を見送る。
家族控え室があって、そこで待つことに。

看護婦さんから『何かあった場合およびしますので、できるだけこちらにいてください』との事。

父と一緒にひたすら待つ。

もう一人が手術室に入っていった。おじいさんだった。
その家族が我々と一緒に家族控え室にいた。

昼が来る前にその家族は手術が終わり、別の家族が控え室にやってきた。

病院の控え室から見る外の風景はあまりに寒寒しく、辛いものだった。

そうこうしているとまた我々だけになってきた。
夜になり、冬の一日を病院の家族控え室に過ごしていた私はさすがに忍耐の限界に達していた。
当初8時間と言われていたので9時間はかかると見込んでいたが、結局10時間に及んだ。
手術室の入り口前にある部屋で手術直後の担当医師からの説明があった。

『残念ですが・・・・・』

血の気が一気にひいていく。みるみる自分の形相が変わっていくのがわかる。

『・・・・当初の診断よりも進んでいました。で、これが・・・』
机の脇に置いてあった、四角い箱のなかから何か血のついたものをみせた。
『・・・奥さんの病巣ですね・・・』
虫ピンのようなもので固定された組織を私はぼんやりと見ていた。

試験管のようなものに入れられた組織片、手術中の写真など普段の私ならば卒倒してしまいそうなものが次々に提示される。

結論は、「手術としては成功」したらしい。

後に妻と話た結果、この時の説明は私の頭にほとんど入っていなかったし、あきらかに間違った理解をしていたことがわかった。残念ですがの一言がなせる技である。

手術室から出てきた妻を見たときは、私は半分泣いていたのかもしれない。
妻の意識ははっきりしていて廊下のどまんなかにいた父を見て、
『なんで、手術室からでたら最初にみたのがあんたじゃないんだ』とぼやいていた。

病室はナースセンターのどまん前になっていた。
結局私は12時間病院にいたことになる。