2003幻影 〜コーヒー〜
妻の容態が悪化し、脳梗塞と同じ状態となりほぼ危篤状態となった3月末。
モルヒネパッチ&精神安定剤で意識が朦朧としていた。
急に僕らはすることがなくなった。
点滴は12時間おきだし、尿バックは一日置き。
欲しがった水やかき氷も、痛み止めすらいらなくなった。
それまでの看護疲れで義父が我が家で寝込んでいた。
僕は和室のベットの脇でインスタントコーヒーを飲んでいた。
ずっと。
ずるずると。
和室のベット脇に腰掛ける場所があってそこに腰掛、じっと妻の顔を見ていた。
気持が悪いのであろうか、何度も酸素吸入を鼻からはずしているのをコーヒーカップを脇に置き何度も何度も直していた。
既にもう諦めていたどころか、早く楽にしてやりたかった僕は声をかけず、じっと妻のやせ衰えた顔を眺めながらさめかけたコーヒーをすすっていた。
部屋にあった加湿器の音、空気清浄機の音、そして酸素吸入器の音。
その中で僕は一人寝ないでじっと腰掛けてただ見ていた。
妻が苦しみと痛みから解放されるときを待ち続けた。
さめたコーヒーを飲みながら。
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明日(26日)はビン・カンのゴミの日。
インスタントコーヒーのビンが18本でてきた。
4月以降はおよそ月一本のはず。
私は三ケ月で9本飲んだことになる。
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僕はそれからコーヒー依存になった。
リアルな僕は毎日、ずっとコーヒーを買って飲んでいる。
今も。