哀しき念書
息子が亡妻実家に夏休みでいっている。
だからメイさんと二人きり。
金勘定をしたり、家の片付けをしたりしている。
するとなにやら見覚えのある字の念書がでてきた。
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(妻の名)はXXXに金10万円を貸与し、XXXは
(妻の名)に対し返済するものとする。
尚返済期間はxxxxxとする
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妻は当時花屋にパートで通っていた。
そこに北海道出身の女の子がバイトに来た。
どうやら親との折り合い、特に父親との折り合いが悪く家出同然で飛び出てきたらしい。
自分の境遇と似通ったところがあったせいか妻はその子をかわいがって、よくメシを食わせてやっていた。
そうこうしてその子は母親の具合が悪くなって北海道に帰るという。
ところが残念ながら持ち合わせがない。
金を貸してもらえないかと持ちかけられたらしい。
妻「どう思う?」
私「いくら?」
妻「10万円」
私「たけぇ!」
妻「でも引越しするんやからそれぐらいかかるやんか」
私「はぁ・・その金帰ってこんぞ」
妻「そんなことない!ああいう子は金のことはしっかりしているからきっと返ってくる!」
私「ま、あげるつもりならかまわんよ」
妻「もういい!(怒)私の金から貸すし、念書書いてもらうもの!」
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それから10年。
ケチなくせに浪費家で、お人よしのくせにクールぶっていた妻は大嫌いで憎んでいた父親と死の床で和解した。
あの子はいったいどうしているのだろう。